前寺田市長を偲んで

「Read a b00k」

 私達の豊かな生活を基本的に支えているものは「衣・食・住」ですが、この豊かな暮らしを維持することは市民・個人でも行政人としても大変なエネルギーが必要です。当時、大下前々市長、寺田前市長、行政・地元・市民多くの関係者の大変なご苦労で成し遂げた町田市中心市街地再開発事業「J・R 、小田急線両駅統合再開発事業」等により町田市は他の都市に一歩も二歩も抜きん出た「賑わいある都市」となりました。その後も四期十六年間、引き継がれた前市長寺田様は町田市の急激な人口増加に伴う様々な行政サービス事業等を走りながら考え実践したとご自身でも語っていました。まさに現在の町田の地に滾々(こんこん)と湧き出る深い井戸を掘られた方でした。

 私達はこの水の恩恵を今も授かっています。このことだけでも賞賛されるべきことですが実はもう片方の世界「衣食住を満たして初めて気付くもの」眼には見えない「何か」を文学、伝統、芸術、自然から溢れ出るものとして深く理解し、奥深い豊かな暮しを私達に指し示していた希少なリーダーでもありました。様々な行政サービス、施設等の中でも最後の事業となった町田市民文学館ことばらんど・町田市立国際版画美術館、それに続く奥深い自然のある芹が谷公園等を訪れると、このことがよくよく理解出来ます。

 「一冊の本を読む」ということは何よりも「衣食住満ち足りて」とは違う何かに満たされることです。日常の喧騒のどこかで時間をつくり、静かに瞑想するかのように一冊の本を読み訪れる時、自身の存在がどれ程素晴らしく、無限の生命から選ばれた無限分の尊敬されるべき奇跡的な一人なのかと・・ものの本質をも寺田前町田市長は私達に気づかせたと思っています。
(元町田商工会議所副会頭・元町田市中心市街地活性化協議会会長・町田雑学大学代表)